事実

主に最悪だったこと、たまに最高だったこと

乳首にまつわる性の話

 

「男女の感じ出すのうぜー」

 

この吐き捨てゼリフをとある先輩から言われたのは、

人生の夏休みの真っ只中、天下無敵の大学1年生の冬である。

 

いまこの記事を読んでくださっている皆さんは、

冒頭のこのセリフの背景にどんな場面を思い浮かべながら見てくれているだろう。

 

 

このセリフを言われているとき、

何を隠そう、私は、

 

乳首を触られていたのである。

 

 

第3回目の投稿となる今回は、

この、悲しく、聞きなじみのない奇妙なセリフにまつわる苦情混じりの思い出。

 

 

 

親離れもできていないようなひよっこ1年生の私は、

地元から遠く離れた場所で華の学生生活をスタートさせた。

毎日ぴよぴよ鳴きながら。

 

愛情が詰め込まれた口なじみのある料理を毎日食べ、

なまぬるい部屋で怠惰に過ごしていた青すぎる僕は、

新しい暮らしについての爽やかな希望というよりは、

右も左もわからない、漠然とした不安が頭の中に住んでいて、

後にも先にも、あの春独特の心の持ちようだった。

 

でも単なるほろ苦い気持ちは、

単位をとりやすい講義はどれだとか、

どの組織の新歓にいくべきかとか、

ごく普通の大学生活をたどたどしくこなしていくことで、

また、無二の友人たちと過ごす中で

1日、また1日と忘れていった。

 

僕は、大きめのサークルに2つ所属することにした。

ドデカサークルの中には、いろんな性格のひとがたくさんいて、

誰と誰が付き合った」とか「彼女いるやつが浮気してた」とか

練習終わったらどこに飲みに行く」とか。

毎日そういうことで大忙しだった。

 

所属している2つのサークルのうち、

片方のサークルに所属しているひとのなかに、

自身のセクシャリティについて結構主張する感じの先輩がいた。

 

僕自身はそのひとについてあまり深くは理解していなかったけど、

本人のSNSだったり、飲み会の中の話題とかで聞いたことがある。

 

個人的にはLGBTについて、特に理解がある人間でも、

偏見を持っている人間でもないつもりでいたが、

こういう主張をする人と知り合いになったことは、

短い人生の中とはいえ、初めてである。

 

一定の距離間の中で普通の先輩後輩の間柄だったが、

 

それは、あまりに突然にやってくる。

 

いつものように練習があったとある冬の日、その先輩に、

 

すれ違いざまに、乳首を触られたのである。

 

すれ違いざまの、一瞬にである。

ドデカサークルの活動場所である、ドデカ講義室の真ん中で。

 

何の脈絡もない。

先輩から後輩への、お戯れだろう。

 

僕は、一瞬のお戯れのあと、一瞬で足りない頭をフル回転させた。

 

どういうリアクションがいいんだろう

 

足りない頭からは正解を計算することはできず、

「えっ!」という発声と同時に照れた顔をする

という、

芸人なら相方に楽屋でブチギレられているであろう返しを選択したけど、

僕は平凡で人よりひねくれているだけの学生なので判定はセーフのはずだ。

 

こんなやりとりをスピーディーにこなせば、

 

 先輩の、先輩による、先輩のための、

 

地獄のリアクション採点タイム

 

の到来である。

 

いやな間があるのを感じたあとに先輩がいった言葉は、

 

 

「男女の感じ出すのうぜー」

 

 

 だった。

 

敗北した。

「乳首イジりリアクション選手権」に。

 

しかも、なんならちょっとキレさせているのである。

先輩を。

 

5秒前に、僕の乳首をイジってきた先輩が。

キレているのである。

 

キレているのである。

乳首を触った側が、キレている。

 

 

どうやら僕に出されたお題は、

 

セクシャリティにも配慮した笑えるリアクションをしろ!!」

 

だったようだ。

メイドインワリオかよ。

 

では、以下、

正答の範疇では?

と考えられるリアクションたちをご覧いただこう。

 

・「アリガトウゴザイマス!」とバカデカい声で言う

・真顔で乳首をいじりかえす

・スイッチ入った感じの顔して服脱いでジカで触ってもらう

・そのまま乳首でイく人の真似をする

マジで乳首でイく

 

があげられる。諸説あり。

この他、有力な解答があればコメントや、お便りでご連絡いただきたい。

 

あて先は、

sexuality-nani-ga-seikai-yanen?@vodafone.ne.jp

まで。

 

 

 

この記事をあげるかどうかめちゃくちゃ迷った。

人にまつわる性の話は、難しい。

 

ちなみにこの先輩は、僕に合格を出さなかったけど、

この時以外は、卒業まで僕を無下にすることはあまりなかった。

 

当時から最近まで、この話については、

「かなりの熱量で怒れる」

とコスりまくっていたが、ここに供養させていただきたい。

 

きっとこの話の場面は、

僕が死ぬとき、走馬灯の真ん中くらいにでてくる。

 

そのときは死にながら、乳首でイク。